若林 卓 Taku WAKABAYASHI

若林 卓 Taku WAKABAYASHI

約5年間、眼科医として臨床に携わり、2010年より大学院生として高倉研究室で研究を開始しました。

研究内容

糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症、病的近視などの眼疾患は中途失明原因の上位を占める重篤な疾患である。これらの疾患は、眼内(網膜血管および脈絡膜血管)における病的血管新生が中心的病態であり、血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor: VEGF)の関与が重要視されている。実際、糖尿病網膜症患者の眼内血管新生にはVEGFが深く関与すること1、脈絡膜新生血管モデルにVEGFの発現が確認されていること、さらにはVEGFシグナルの阻害により実験的脈絡膜新生血管が抑制された2という実験結果からもVEGFが眼内新生血管の発症や活動性に直接関与していることが裏付けられている。こうした背景から近年、眼科領域では従来のレーザー治療や手術加療に加え、VEGFを標的とした抗VEGF療法が臨床応用されるようになり、その有効性(眼内新生血管の退縮効果)が報告されている3-6。しかし、抗VEGF療法の無効例や再発例も少なくなく、眼内病的血管新生の進行を食い止められずに失明に至る症例も未だ多く存在する。
本研究室では血管内皮細胞の不均一性(heterogeneity)、多様性という観点から、病的血管新生に貢献する血管内皮細胞の生物学的特性や薬剤抵抗性などの分子メカニズムを解明し、病的血管新生を制御する新規治療法の開発を目指して研究を行っている。

参考文献

  1. Aiello LP et al. N Engl J Med 1994 ;331:1480-7.
  2. Krzystolik MG et al. Arch Ophthalmol 2002;120:338-46.
  3. Gragoudas ES, N Engl J Med 2004;351:2805-16.
  4. Rosenfeld PJ, et al. N Engl J Med 2006;355:1419-31.
  5. Avery RL, et al. Ophthalmology 2006;113:1695.e1-15.
  6. Wakabayashi T, et al. Ophthalmology 2008;115:1571-80.
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