1997年京都大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。1997-2001年熊本大学医学部および発生医学研究センターで助手〜助教授。2001年金沢大学がん研究所、教授。2006年大阪大学微生物病研究所、教授。
脳や腸管など我々の体の組織では、各々の組織環境のもと組織特異的幹細胞から適した組織細胞が分化し、正常な機能を持つ器官を形成します。この組織環境の基本をつくりだすのが血管であり、血管構築がなければ組織・器官は形成されません。情報伝達分野では、血管形成の分子メカニズムを明らかにするとともに、得られた成果をがん治療や再生医療に役立てるべく研究を展開しています。
血管は全身に酸素や栄養、免疫細胞など様々な物質を運ぶ極めて重要な器官です。我々のからだの全組織・器官を正常に維持するために、血管の構造やネットワーク構築は厳密に制御されています。この血管の構造やネットワークはどのように形成されるのでしょうか。研究室では、血管形成の全貌を明らかにすべく、血管新生や血管成熟化に重要な因子、血管の走行パターンをつくりだす分子メカニズムに着目し、解析を進めています。
近年、神経系など様々な組織において組織幹細胞が血管の周囲に存在することが明らかになり、血管が提供する組織の微小環境(ニッチ)が組織幹細胞の維持と増殖に重要であることが分かってきました。研究室では、がん細胞の中でも幹細胞性の性質をもつがん幹細胞が、血管の近傍に存在し、血管が提供する環境をがん幹細胞ニッチとして利用し増殖していることを明らかにしました。がん組織の血管は、がん特有の線維芽細胞が近接し、不完全な構造やネットワークを形成するなど正常血管とは異なる特徴が見られ、抗がん剤や免疫細胞のアクセスが制限されていると考えられています。このようながん組織の血管形成や構築を制御し正常化することができれば、血管が提供するがん幹細胞ニッチを破壊し、がんの根治が可能になると考えられます。研究室では、血管形成の分子メカニズム解析で得られた知見を活かし、がん根治のための治療法開発に向けて研究を展開しています。この血管形成の制御をターゲットとする治療法の開発は、がん細胞の破壊を目的とする抗がん剤とは異なり、より副作用の少ない治療法となることが期待できます。
研究室では、2012年に血管内皮幹細胞を同定し、この細胞が生体内で正常な血管に分化し、血管の長期維持に関わることを明らかにしました。この細胞は血管形成や構造の破綻が病態に関与する疾患の治療に大きく貢献し得ると期待されます。研究室では、血管内皮幹細胞を用いた治療の開発と実用化に向けて研究を展開しています。
高倉研究室では大学院生を広く募集しております。
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工学系などの分野が異なる方も受けいれていますので、一度見学に来てみてください。
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